今回は韓国語の敬語について解説します!日本語同様、話す相手や話の対象になっている人が敬うべき人の場合は、韓国語でも敬語を使います。
日本語程複雑だったり難しくはないのですが、スムーズに使えるようになると、韓国語レベルもぐっと上がります。
うっかり失礼なことを言ってしまわないためにも、敬語の使い方をしっかり学んでおきましょう。今回は、初心者や独学者がまずは押さえておきたい内容に絞ってお伝えします。
韓国人にとっての敬語
韓国は儒教の国。上下関係や人を敬う文化が日本よりもさらに強く根付いた国です。敬語を使う対象は、見ず知らずの人からお客様や上司はもちろん、家族の中でも祖父母や、場合によっては両親に対しても敬語を使います。
「年齢が上の人は敬うべき対象」という意識が日本より強いようです。なので家族であっても自分より年配の祖父母や両親は、敬語を使う対象になり得るというわけです。家族のあり方によっても違いますが、根底にはこういう考え方が存在していますし、子供であっても家族には敬語を使ったりしています。
余談ですが、敬語以外でも、“人に物を渡すときはもう片方の手を添えて渡す”“お酒を飲むときは先輩の方は見ず、外の方を向いて飲む”など、日本ではやらないような人を敬う行動も多く見受けられます。
とにかく上下関係が強く、上司の言うことは基本的に絶対でありながら、後輩の飲み代なんかは絶対先輩が払ってくれるなど、プラスの意味でもちょっとマイナスの意味でも上下意識が日本よりも強いのが韓国の特徴です。
敬語の2種類の語尾 습니다( ㅂ 나다 ) と요
韓国語の敬語に対する意識を踏まえ、実際の敬語について解説していきましょう。
韓国語の敬語は、基本的に2種類で、 습니다(ㅂ나다)と요の語尾に分けられます。使い分けは以下の通りです。
습니다(ㅂ나다) の使い方
◆名詞につく場合:입니다
1.전화입니다. (電話です。)
2.집입니다. (家です。)
◆動詞や形容詞につく場合:습니다、ㅂ니다
1.있습니다.(あります。)
2.사랑합니다.(愛しています。)
つく動詞や形容詞の基本形から다を除いたときに、パッチムで終わる場合は습니다、母音で終わる場合はㅂ니다をつける。
ちょっと堅めの敬語。公式な場や、しっかりと敬語を使うときにはこれを使う。
使われる場面
ニュース、国の公式な声明、しっかりとした接客、軍隊、その他会社やお金持ちの家など日常の中でも、より丁寧で尊敬の意を表したいとき
요の使い方
◆名詞につくとき:이에요
1.전화이에요.(電話です。)
2.집이에요.(家です。)
略して예요と表現も可能。ただし、つく名詞が母音で終わる場合のみ。(例では1.の場合。전화예요.)口語でも使用可能。
◆動詞や形容詞につく場合:아/어요
1.있어요.(つく動詞の最後の母音が이、으、우、어のときは어요)
2.와요.(つく動詞の最後の母音が아、오のときは 아요 )※오아요.→略して와요.
하다は、해요となるのが決まりなので、これはそういうものと覚えましょう。가다のように母音が아で終わる言葉は、発音上아が重なるので省略します。例えば가다は、가아다→略して가요となります。
フランクな敬語。日常会話で主に使われる敬語。基本的に知らない人なんかと話すときはこれを使えばOK。
使われる場面
日常会話。両親や祖父母、仕事の先輩や上司、取引先、初対面の人、一般的なお店。
基本的に日常会話では요の敬語を使っておけばOK。お店の人やそこらへんで知り合った人などは皆、요の敬語で大丈夫。住んだりしない限りは、습니다はあまり使わないと思いますが、誰かに使われたときにわかるようにはしておきたいですね!
(으)시の使い方
一般の動詞や形容詞に(으)시をつけると、敬語になります。例えば、
■가다(行く)→가시다(行かれる)
■하다(する)→하시다(なさる)
パッチムがある動詞や形容詞には、(으)시をつけます。
■좋다(良い)→좋으시다
■괜찮다(大丈夫)→괜찮으시다
このようにどんな動詞や形容詞でも、(으)시をつけることで敬語になります。
(으)시をつけた動詞に、さらに敬語の語尾をつけると
①가시다 → 다を取ってㅂ니다をつける → 가십니다
②가시다 → 다を取って어요をつける → 가시어요 → これが略されて가세요
~세요は、会話でよく使う形ですが、原理としては上記の通り。この形は決まりきった使い方なので、パッチムがない動詞・形容詞には세요、パッチムがある場合には(으)세요をつけると敬語になると覚えておけばOKです。
敬語の命令形「~십시오」
敬語にも命令形があります。“頼む”というよりは、「やりなさい」の敬語です。変な感じがしますが。~십시오という語尾をつけます。もうこれはそういうものなので、そのまま覚えてください。笑 ~십시오という形でなんとなくわかると思いますが、区分としては습니다と同じような感覚で堅い印象です。
公共機関などのアナウンスでよく聞く使い方でもあります。「シートベルトを締めてください。」とか飛行機でもよく聞きますね。「どうかお願いです、やってください。」というよりは、「(危険なので・こういう手続きなので)これをちゃんとやってください。」というニュアンスです。訳としては「~してください。」となります。
もう少しライトに日常会話で使う「~してください。」は아/어 주세요が一般的です。주세요はどちらかというと“頼む”ニュアンスが強いので、そこが~십시오との違いです。
敬語で使われる一人称「저」
敬語を使うときは自分を呼ぶ一人称も丁寧なものに変えるべきです。韓国語での一人称は少なく、普段は나を使います。日本語では「わたし」「僕」「俺」など様々ですが、韓国語では基本나くらいしかありません。
日本語で言うところの「わたくし」が敬語のときには使われますが、韓国語でこれにあたるのが저です。저は、自分をへりくだって言う一人称です。
저は、「わたくしが」のように助詞の「が」が続くときには、제가という形に変わります。
敬語のときにだけ使われる動詞
一般的な動詞や形容詞は、これまでの通り、(으)시をつけることで敬語として成り立ちますが、一部の動詞については、敬語用に別の動詞が存在しています。
- 드시다(召し上がる):먹다
- 주무시다(お休みになる):자다
- 계시다(いらっしゃる):있다
- 돌아가시다(亡くなる):죽다
- 말씀하시다(おっしゃる):말하다
以上の動詞は、敬語のときのみ使われます。一般の動詞に(으)시をつけるのでは間違いになります。これは丸まま覚えましょう。
この中の계시다は、「〇〇がいらっしゃる」でもちろん使いますが、進行形の動詞「~している」の形でも使うことができます。
■보고 계시다.(見ていらっしゃる。)
人を敬って呼ぶ「様」=「님」
誰かを呼ぶ際に敬称として使う、日本語で言うところの「様」は、韓国語では「님」です。日本語では、名前の後や、「お客様」などとして使われますが、韓国語では役職や両親の呼び名の後に付けるなど、さらに幅広く使われます。
お客様→손님、고객님
손님の方がライト。고객님は「顧客」の漢字語+様。コンビニやマートなど一回限りのようなお客様には손님、会員や常連などがいるようなお店やちょっと高級感のあるシチュエーションでは고객님。
先生→선생님(先生+様)
「教師」の意味で使われるのが一般的ですが、医者や弁護士など専門職の方にも敬って선생님を使うことが度々あります。의사님「お医者様」 변호사님「弁護士様」とも言いますが、他にも(職業+様)の使われ方は多々あります。
役職→사장님(社長+様) 부장님 (部長+様)과장님(課長+様)
結構役職なら結構何でも님をつけられるようです。ドラマでは기자님(記者+様)や이사님(理事+様)も聞いたことがあります。
家族→어머님(お母様) 아버님(お父様) 따님(娘さん) 아드님(息子さん)
어머님や아버님は、義理の関係や彼氏・彼女・友達の両親に対して使われます。따님や아드님も、敬うべき人の子供に使われます。
自分が普通の会話で使う可能性があるとしたら、어머님や아버님くらいでしょうか。(例えば韓国人の友達がいたりするなら)손님や고객님は、旅行中によく使われる言葉なので聞き取れるようになりたいところです。
ちなみにSUPER JUNIORのヒチョルが、ヒニムと呼ばれていますが、こちらもヒチョルのヒ(희)に님を足したあだ名ですね!
謙譲語「~して差し上げる」の드리다
韓国語では、日本のように尊敬語・謙譲語・丁寧語のような細かい敬語区分認識はあまりないように思いますが、日本語で言うところの謙譲語にあたるものの一つ「드리다」はよく使われるので覚えておきましょう。
드리다は、「あげる」の謙譲語で「差しあげる」という意味です。
■할머니에게 선물 드렸다.(おばあさんにプレゼントを差し上げた。)
他の動詞につくことで、動詞を謙譲語の状態にすることができます。
■제가 안내 해드릴게요.(私が案内して差し上げますね。)
謙譲語なので、自分が下手になったときに使う言葉です。例えば、自分が店のスタッフや職員だったり、会社の部下だったりするシチュエーションです。その他にも知り合いで目上の人に対して使うこともできますが、結構下手に出てる印象なので、韓国で暮らさない限りなかなか使う機会はないかもしれません。
逆に自分が客として店に行くと、この言葉を使われる機会が結構あるかもしれません。聞き取れるようになるためにも、この言葉の使い方はぜひ覚えておきましょう。
日常でよく使われる敬語フレーズ
日常では、決まりきったような敬語のフレーズも結構あります。韓国に行くとよく聞くフレーズです。フレーズを覚えておくことで、文法の法則も覚えやすくなるので、いくつか紹介したいと思います。旅行などでもよく聞くフレーズです。
인녕하세요.(こんにちは。)
挨拶の定番「こんにちは。」詳しく分解すると、인녕하다に敬語の語尾시어요(세요)がついた形です。인녕は漢字語で「安寧」を韓国語読みしたもの。直訳は「安寧ですか?」=「お元気ですか?」というわけです。会ったときに使う言葉なので日本語で言うところの「こんにちは」として定着しています。どんなときでも使える挨拶ですね!
안녕하십니까?(こんにちは。)
인녕하세요.と意味や造りは同じですが、ㅂ니다の形が使われている分はより丁寧で堅い印象です。また、하십니까は疑問形ですので、より「お元気ですか?」感が強いですね。公式の場での挨拶やニュース、公的機関や高級な場所でのアナウンス等で聞かれます。
감사합니다.(ありがとうございます。)
こちらも定番のフレーズ「ありがとうございます」。ㅂ니다の形なので、ちょっと丁寧な印象はありますが、どんな場面でも使える言葉です。안녕하십니까?よりは、もっとライトに使える感じで、とにかく「ありがとう」と思ったらいつでも使って大丈夫◎
어서 오세요.(いらっしゃいませ。)
어서は「早く、どうぞ」、오다に敬語の語尾시어요(세요)がついた状態です。直訳は、「どうぞ来てください。」から「いらっしゃいませ。」という意味になります。お店に入ったときに必ず言われる言葉ですね。その他日常で考えられるシチュエーションとしては、誰かが自分の家に来たときとかでしょうか。でもやっぱりお店の印象が強いですね。
어서 오십시오.(いらっしゃいませ。)
어서 오세요.と同じ意味ですが、십시오なのでより丁寧な印象。デパートや高級なお店の「いらっしゃいませ」はこちらが使われます。
안내 말씀드리겠습니다.(ご案内申し上げます。)
公共機関等でよく聞くフレーズです。分解すると、
안내→「案内」
말씀→「言葉」の丁寧な形、
드리(다)→謙譲の意味を表す
겠습니다→「これから~しますよ。」という意味
空港などでよく聞きますね!言葉の通り、何か案内する前の宣言みたいな感じです。
밋있게 드세요.(おいしくお召し上がりください。)
飲食店で食べ物を出されるときに必ず言われるフレーズです。分解すると
밋있(다)→「おいしい」
~게→「~く」=「~するように」のような意味
드시(다)→「召し上がる」
요→敬語の語尾
「召し上がれ~」という感じですね。日本語ではお店でなかなか言いませんが、韓国ではかなりの高確率で言われる言葉です。なんかハッピーになりますよね♡笑
출입문 닫겠습니다.(扉が閉まります。)
電車で扉が閉まるときに流れるアナウンスです。
출입문→「扉」漢字語で「出口門」の韓国語読み。「出入りする扉」という意味合いです。
닫(다)→「閉まる」
겠(다)→「これから~するよ」という未来の意味を付与
습니다→敬語の語尾
무엇을 도와드릴까요?(お手伝いしましょうか。)
「お手伝いしましょうか」という訳になってしまいますが、英語でいうところの「May I help you?」という意味です。主にお店で何かを探したり迷ったりしていると、店員さんに言われます。日本語ではこれに相当する言葉があまりないですね。
도와드릴까요?だけでも使うことができて、例えば町で道に迷ってるだとか、荷物が重そうだとか、何か困ってそうな人に対して「自分が何かしてあげましょうか?」といいたいときに使うことができます。なんて親切!!笑
무엇→「何か」
을→「~を」
돕다→「手伝う、助ける」語尾をつけたりする際には아に続く形として도와と活用されます。
드리(다)→謙譲の意味を表す
ㄹ까→「~しようか?」英語で言うところのShall I やShall weのような意味合い
요→敬語の語尾
계산해주세요.(お会計お願いします。)
感じで使います。日本語でもよく使う言葉なのでイメージしやすいですね!
계산→「会計、計算」漢字語「計算」の韓国語読みです。文字通り「計算」という意味もありますが、「お会計」の意味合いで使われるのが日本語との違いです。
하다→「する」
주다→「あげる、くれる」他の動詞につくと「~してあげる、~してくれ」の意味を付与
세요→敬語の語尾
(해)주세요は「~(して)ください」とお願いする敬語の決まり文句で本当によく使うので、構造がどうのではなく、このまままるごと覚えてしまえばいいと思います。活用としては、動詞に合わせて아/어を使い分けて주세요をつけます。
まとめ:韓国語の敬語は日本語より簡単
日本語の敬語は、尊敬語・謙譲語・丁寧語と別れていて自分の立場を上げるだの下げるだの複雑ですが、それに比べれば韓国語の敬語はそんなに難しくないと思います。ここにまとめた内容を把握して使えるようになれば、日常会話はまず問題ありません。
こと旅行程度であれば요だけできれば会話できます。韓国で仕事をしたり、韓国人のお客さんに対して店員や社員として接することがある場合でもここに書いてある内容でおおよそカバーできると思います。
冒頭でも書いたように、韓国は日本よりももっと敬語を使う相手の幅も広く、敬う気持ちがさらに強いです。そういった文化背景も把握しておくと、言葉や細かい所作の意味も理解しやすいのかなと思います。
ちゃんとした敬語を使えると相手もいい印象をもってくれます!例えば韓国人彼氏のお母さんや、韓国支社の部長さんなど目上の韓国人と良い関係を築くためにも、本質からマスターしたいですね^^